
汚水浄化処理による温室効果ガス発生量の比較(提供:農業・食品産業技術総合意研究機構)
(独)農業・食品産業技術総合意研究機構は1月16日、家畜ふん尿汚水処理で発生する強力な温室効果ガスを削減する技術を開発したと発表した。同機構の畜産草地研究所の研究によるもの。微生物を付着させた炭素繊維を利用して二酸化炭素(CO2)の300倍の温室効果があるとされる一酸化二窒素(N2O)を分解、その発生量を90%以上削減することに成功した。今後は試験装置の大型化などを進め、地球温暖化防止につなげたいとしている。
■微生物使い2段階発酵で
家畜ふん尿汚水中では窒素のほとんどがアンモニウムイオンとして存在している。そのため微生物を用いた汚水処理でN2Oを出さないようにするには、①酸素のある条件下で好気性発酵、②酸素のない条件下での嫌気性発酵――の2段階を経てアンモニウムイオンを完全に分解して窒素にする必要がある。新技術は、表面に微生物を付着させた炭素繊維を利用することで、この2段階発酵を効率よく進めるようにした。
家畜ふん尿の汚水処理には曝気槽に空気を吹き込んで好気性発酵させる活性汚泥法が使われているが、空気を吹き込むため嫌気性発酵がうまく進まず、N2Oが発生しやすいという問題があった。これに対し炭素繊維を用いる新技術は、繊維表面にできる微生物膜の表層で好気性発酵が、また深層で嫌気性発酵が起きやすくなり、2段階発酵が実現できる仕組みだ。
実験では、既存の活性汚泥処理施設の曝気槽1㎥当たり0.2kgの微生物付き炭素繊維を投入、養豚廃水を1日かけて処理したときのN2O発生量を従来の活性汚泥法処理と比較した。その結果、従来法ではN2O発生量が廃水1㎥当たりCO2換算で725gだったのに対し、新方式では42gになり、90%以上削減できた。
母豚100頭規模の畜舎に新技術を導入した場合のコストは、炭素繊維の原料費約30万円のほか微生物膜の加工費用や設置費用がかかるという。ただ、他の窒素除去技術に比べると、初期費用が三分の一程度で済むと農研機構はみている。このためすでに実規模の装置による試験を開始、運転条件の最適化などを進める。



