オゾン層破壊をもたらす塩化水素が北半球で増加
―原因は大気循環の変動による一時的なもの
:国立環境研究所/東北大学ほか(2014年11月5日発表)

 (独)国立環境研究所と東北大学は11月5日、ベルギーなど8カ国の研究機関が参加した研究で、オゾン層破壊をもたらす塩化水素の濃度が北半球で増加していることを見出したと発表した。原因を調査したところ、北半球の大気循環の数年程度の短期的な減速によるもので、一時的な現象であることが判明したという。

 

■排出規制は問題なく機能

 

 有害な紫外線を増やすオゾン層破壊は、主にフロンなどの化合物の放出によって生じる。フロンが上空の成層圏に運ばれると紫外線などで分解されて活性塩素を生じ、これがオゾン層を破壊する。

 ただ、すぐに活性塩素が作られるわけではなく、通常は比較的安定な塩化水素や硝酸塩素となり、北極や南極の春先に特殊な条件がそろうと、活性塩素への変換が起こる。今回増大が観測された塩化水素は、活性塩素の元になるこうした大気中の成分。

 同研究所と東北大は今回、大気成分の長期モニタリングのための国際的な観測ネットワーク(NDACC)の観測データと、北半球中緯度の観測拠点に当たる茨城県つくば市の観測データを用いて塩化水素を調べた。

 フロンなどの生産・排出の国際的な規制により、1990年代半ば頃から大気中の塩素の総量は減少傾向にあるが、今回の解析で、成層圏の塩素量が北半球でのみ増加していることが見つかった。

 その原因を調べたところ、塩化水素の増加が、未知の塩素化合物の放出あるいは既知の塩素化合物の放出量の過小評価によるものではなく、大気循環の変化によると結論付けられたという。

 こうした結果から、モントリオール議定書に基づくフロン類の排出規制は問題なく機能しており、成層圏の塩素量を削減する効果は上がっているとしている。

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