(独)国立環境研究所は11月4日、米国ワイルドサーモンセンターと共同で、水中音響ビデオカメラを用いて絶滅の危機に瀕している日本最大の淡水魚イトウを調査し、産卵のために河川を遡上しているイトウの親魚の数を高い精度で計測することに成功したと発表した。
■猿払川では保護活動が実り安定した個体群
イトウはかつて北海道や東北地方の40数河川に生息していた記録があるが、現在は北海道のみ10河川ほどにしか確認されておらず、環境省のレッドデータブックで絶滅危惧IB類に分類されている。
調査は、北海道北部を流れる2級河川・猿払(さるふつ)川の支流で2013年と2014年の2回、4、5月に実施した。音波を発射し、その反射波をとらえて映像化する高精度の音響ビデオカメラを水中に設置し、産卵で遡上するイトウを昼夜とも約1カ月間連続撮影した。
その結果、2013年は4月23日に遡上が始まり、5月14日に終了するまでの間に合計335尾、2014年は4月20日から5月13日にかけて425尾を確認した。1日で146尾の遡上が確認された日もあったという。
撮影状態が比較的良かった384尾の体長を計測したところ、平均は74cm、最長は113cmと推定され、体長1mを超える大型イトウが7尾確認された。今回の結果から、流域全体でのイトウ親魚の生息数は1000~1250尾と推定されたという。
猿払川でのイトウの生息数調査は1998年に実施例がある。当時は川底の産卵床を数えて推計するという方法だったので単純に比較できないが、今回の生息数推定値は前回の推定値を上回っており、猿払川では少なくともイトウの減少傾向は認められなかったという。
この河川では地元有志団体や王子ホールディングス(株)がイトウの保護活動を続けている。この活動が実を結び、安定した個体群が残されてきたと考えられるとしている。
ただ、北海道全体ではイトウの生息を脅かす開発や環境の改変、釣りなどの脅威は現存しており、何らかの対策が求められるとしている。

婚姻色が現れたイトウのオス(提供:(独)国立環境研究所)