住友林業(株)と総本山仁和寺(京都市)は4月11日、組織培養法で増殖させて苗を作り、2012年2月に境内に植えた“御室桜(おむろざくら)”が、今春初めて開花したと発表した。
■先祖帰りなく八重咲きの景観後世へ
御室桜は、1646年(正保3年)の伽藍再建の際に植えられたと伝えられている八重桜で、京都の春の最後を彩る遅咲きの桜として親しまれている。
ただ、樹齢360年を超えて樹勢の衰えが目立ってきた。そこで、通常の増殖手法である接ぎ木が考えられたが、木の衰えから枝が伸びず、適した枝がほとんど採取できなくなった。また、株の根元から出る小枝の萌芽枝(ほうがし)を選んで株分けする苗木作りでは、萌芽枝が先祖帰りして八重が一重になったりすることが多く、本来の景観が損なわれることから、仁和寺では住友林業グループ、千葉大学園芸学部と共同で御室桜の景観を後世に引き継ぐための方法などについて研究、その一環として組織培養による育苗に取り組んできた。
共同グループは組織培養の一手法である「茎頂(けいちょう)培養法」を用いることにした。これは、①冬芽を採取し、芽の分裂組織である茎頂部だけを顕微鏡下で取り出す、②これを試験管に入れて、御室桜用に開発した培養液で育て、大量の芽(多芽体)を作り芽を伸長させる、③伸びた芽を切り分けて、発根を促す培養液を加えた人工培養土に植え付ける―こうして2週間ほどで幼苗ができる。これらは無菌の環境の下で行う。この苗を2週間ほど低温処理したのち、室温内で育苗するなど外の条件に慣らしていくという。
こうして4年前に稚樹の増殖に成功し、2年前に御室桜苗木の第1号を植栽し開花を待っていた。
今回開花した桜は、本来の八重咲きであることが確認されたという。