水中の放射性セシウム濃度を短時間で測定
―カートリッジを作製、前処理を6時間から8分に
:産業技術総合研究所/日本バイリーンほか

 (独)産業技術総合研究所は4月7日、日本バイリーン(株)や福島県農業総合センターと共同で、水中の放射性セシウム濃度を素早く測定できるシステムを開発したと発表した。セシウム吸着効率の極めて高いカートリッジを作製、溶存セシウムの濃縮に要していた前処理時間を大幅に短縮した。4月から日本バイリーン社が試験販売し、福島県内でのセシウムの環境動態モニタリングに活用される予定という。

 

■多地点で継続的モニタリング可能に

 

 福島第一原子力発電所から放出された放射性セシウムの環境モニタリングが続けられているが、福島県内の多くの河川では、水の懸濁物に付着したいわゆる懸濁態セシウムを含めて河川水中の放射性セシウム濃度は、「水1ℓ当たり1.0ベクレル未満」であり、なかでも水に溶けている溶存態セシウムの濃度は、「水1ℓ当たり0.1ベクレル未満」と低い。
 これを計測するのには、水分を蒸発させてセシウムを濃縮してから放射能測定する必要があり、20~100ℓの河川水の前処理に6時間から1週間もの時間がかかっている。
 研究チームは今回、セシウム吸着性能に優れた青色顔料のプルシアンブルーを用い、この構成元素のひとつである鉄元素を亜鉛元素に置き換えることにより吸着性能をさらに高め、これを付着させた不織布でカートリッジ(「Zn-C」)を作製した。
 このカートリッジの吸着性能を試験したところ、水20ℓを毎分0.5ℓの速さで処理した場合には99.5%以上、毎分2.5ℓの場合には約96%の溶存セシウムを吸着することが確認された。また、従来のプルシアンブルーを使ったカートリッジ(「PB-C」)と、酸性・塩基性の環境下で比較してみると、PB-Cでは回収率の低下がみられたが、Zn-C ではほとんど変化せず、高い回収率が示された。
 Zn-Cカートリッジにセシウムを吸着させ、その放射能を測定すれば大量の水に溶け込んだ放射性セシウムの濃度を短時間に割り出せる。約6時間かかっていたセシウム含有水20ℓの前処理はわずか8分に縮まったという。
 このカートリッジの使用により、多地点での継続的なモニタリングの実施や、それによる長期的な環境影響評価が期待できるとしている。

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図

酸性・塩基性の環境下での溶存態放射性セシウムの回収率グラフ。従来のプルシアンブルーを使ったカートリッジ(「PB-C」)に比べ、Zn-Cは高い回収率を確保した(提供:産業技術総合研究所)