(独)農業・食品産業技術総合研究機構は10月11日、収量がこれまでの品種より約4割も多く、製パン性に優れたパン用小麦の新品種を開発したと発表した。新品種の名称は、「せときらら」。小麦作りでの大敵の赤かび病にも強く、ふっくらとしたパンが作れ、「温暖地向けに広く普及することが期待される」と同機構はいっている。
■3種の遺伝子を導入し育成に成功
既に山口県がこの「せときらら」を奨励品種に決め、この秋から同県内で本格栽培が始まる予定のほか、岡山県の津山市も試験栽培を既に開始している。
パン用小麦として温暖地では、現在「ニシノカオリ」、「ミナミノカオリ」という品種が広く栽培されているが、パン用輸入小麦より製パン性が劣る、栽培時に赤かび病にかかりやすいなどの弱点を抱えている。
新品種「せときらら」は、麺用の小麦「ふくほのか」に、(1)タンパク質のグルテンを強くする高分子量グルテニン遺伝子(2)グルテンの伸びを高める低分子量グルテニン遺伝子(3)小麦の種子を硬質にする遺伝子、の3種の遺伝子を導入し育成することに成功したもの。
この新品種「せときらら」の収量は、現用品種の「ニシノカオリ」を約4割も上回ることが確認済みで、パン作りにおいて最も重要視される製パン作業性も「ニシノカオリ」、「ミナミノカオリ」より優れていることを製パン試験で実証しているという。