
穂を出したミナトカモジグサ(提供:理化学研究所)
(独)理化学研究所は10月10日、イネやムギなどイネ科の作物と同じ単子葉植物の実験用植物「ミナトカモジグサ」の遺伝子材料を世界各国の大学や研究機関などに同日から提供すると発表した。双子葉植物ではすでにシロイヌナズナの遺伝子材料が研究用に提供されているが、単子葉植物では世界初。遺伝子工学を活用したバイオマス研究や主要作物の新品種開発などに弾みがつくと期待される。
■既にゲノム解読終了
ミナトカモジグサはイネ科の雑草で、草丈が30cm程度と小型。蛍光灯の下でも育ち、3~4カ月で種子を収穫できる。遺伝子組み換え技術で多くの個体を実験室内で育て遺伝子の機能を調べるのに適しており、次世代のモデル実験植物と期待されている。
すでに2010年にはゲノム(全遺伝情報)解読も終わっている。さらに、このゲノムの中にミナトカモジグサが生命活動を維持するのに必要なタンパク質を作る設計図である遺伝子が2万5,532個存在することも分かっていた。
今回提供する遺伝子材料は、これらのタンパク質を人工的に合成するのに必要な全ての情報を持つ完全長cDNA。理研バイオリソースセンター(茨城・つくば市)の実験植物開発室にインターネットを通じて申し込めば、一定の手続きを経た後に完全長cDNAが送られてくる。
研究者は、この完全長cDNAを利用することでミナトカモジグサが植物体内で作るタンパク質を遺伝子工学の手法を用いて自由に合成できるので、個々の遺伝子がどのような働きをしているかを調べることも容易になる。例えば、イネやコムギの花が咲くときには収量に大きく影響する出穂という現象が起きる。これまでその詳しい仕組みは未解明だったが、その解明にも道が開けると期待される。