間質性肺炎、脂肪酸の組成が発症に関係
―バランスの崩れが症状の悪化に
:筑波大学/群馬大学

 筑波大学と群馬大学は10月11日、肺が硬く縮んで呼吸ができなくなる間質性肺炎に動物性脂肪に多く含まれる脂肪酸が深く関わっていることを突き止めたと発表した。体内でこの組成バランスが崩れると間質性肺炎の症状が悪化することなどを動物実験で明らかにした。組成バランスは食事や糖尿病などとも深く関係しているとみられ、生活習慣の改善も含めた新しい予防・治療法の開発につながると期待される。

 

■患者の肺に酵素「Elvol6」が著しく減少

 

 筑波大医学医療系の松坂賢准教授と島野仁教授と群馬大大学院保健研究科の横山知之教授、医学系研究科の前野敏孝講師と倉林雅彦教授らの研究グループが明らかにした。
 間質性肺炎は大気を取り込む肺胞と毛細血管を支える組織が炎症を起こす病気で、進行すると組織が線維化して硬くなる肺線維症となり、治療が難しくなる場合が多い。近年増加の一途をたどっているが、発症の詳しい仕組みは未解明だった。
 そこで研究グループは、肺の機能を維持するのに不可欠な「肺サーファクタント」と呼ばれる物質が肺胞で作られる点に着目、その原料となる体内の脂肪酸の組成が間質性肺炎の発症や悪化とどう関係しているかを調べた。
 まず、体内で中性脂肪を分解して脂肪酸にする化学反応を促す酵素「Elvol6」が患者の肺では著しく少ないことを発見。マウスを用いた実験で、この酵素を体内で作れないようにすると症状が明らかに悪化することを突き止めた。
 さらに、この実験動物に人為的に間質性肺炎を起こさせた肺線維症モデル動物を作り、その肺組織から脂質を抽出して脂肪酸の組成を調べた。この結果、健全な野生型マウスに比べて飽和脂肪酸であるパルミチン酸が増加、不飽和脂肪酸であるオレイン酸とリノール酸が減少していることがわかった。
 研究グループは、「食事中の脂肪酸の組成やバランス、肥満、糖尿病などに伴う体内の脂肪酸組成の変化が肺線維症の発症に関わる可能性が考えられる」として、今後は臨床研究などを通じて因果関係を解明していく。

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