耐久性100倍、高性能高分子アクチュエーター開発
―カーボンナノチューブ利用し軽量・低消費電力
:産業技術総合研究所/アルプス電気

2.5Vの電圧で駆動中の今回開発したナノカーボン高分子アクチュエーター。左が電圧をかける前の状態、右が電圧をかけた駆動中の状態(提供:産業技術総合研究所)

 (独)産業技術総合研究所は8月23日、電子部品メーカーのアルプス電気(株)と共同でカーボンナノチューブを利用した高性能の高分子アクチュエーターを開発したと発表した。電圧で板状の電極を変形させて力を出す仕組みで、従来技術の約100倍の耐久性を実現した。軽量、超薄型、低消費電力という特長を持ち、視力障害者向けの点字ディスプレーや超小型ポンプなど広い分野への応用を期待される。

 

■従来の数十倍、3時間以上も変位状態を維持

 

 カーボンナノチューブを用いた高分子アクチュエーターは低電圧で駆動するとして期待されているが、従来は耐久性や変形の連続保持性能などが不十分で実用化は難しかった。
 開発したアクチュエーターは、縦横5mmの薄い板状。直径1nm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)程度の筒状炭素分子であるカーボンナノチューブなどを高分子材料に分散・固化して作った2枚の電極層の間に電解質を挟んだ構造になっている。
 研究グループは、電極層を作るにあたって様々な材料の組み合わせを検討、産総研が開発したスーパーグロースカーボンナノチューブ「SG-CNT」と、それを効果的に分散しながら固めるイオン液体や高分子材料の最適な組み合わせを突き止めた。
 実験では、気温20℃、湿度40%の下でアクチュエーターに±2V(ボルト)で変化する交流電圧をかけた。板状のアクチュエーターは電圧をかけると、そるように大きく変形し、駆動力を出す。新アクチュエーターは、この変形を10万回繰り返した後でも変位の大きさの減少が10%程度にとどまり、実用的な耐久性を持つことが確認できた。従来技術の約100倍の耐久性という。
 さらに、気温23℃、湿度50%の中で一定電圧をかける連続動作実験では、3時間以上たった後もほぼ同じ大きさの変位を維持することがわかった。従来は数分後には元の形に近づき始め、変位を維持することはできなかった。これは、従来の数十倍の連続保持性に当たるという。
 産総研は今後、幅広い分野での応用を検討するとともに、事業化で連携できるメーカーの調査などを進めたいとしている。

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