(独)農業・食品産業技術総合研究機構の果樹研究所は8月20日、過去40年間の平均気温の上昇に伴ってリンゴの甘みが増していることがわかったと発表した。温暖化で農作物の収量や収穫日が変化することはこれまでも知られていたが、作物の食味に変化が起きることを確認したのは世界でも初めて。温暖化の下でも味の良い高品質な果実を生産する温暖化適応技術の開発につながると期待される。
■発芽・開花早まり生育期間延びる
同機構の果樹研究所が長野県果樹試験場と青森県産業技術センターりんご研究所と共同で、30~40年にわたって蓄積してきたリンゴの品種「ふじ」などの品質データと気象データを詳しく分析して明らかにした。
長野の「ふじ」の場合、酸味を表す酸含量は1970年に100mℓ(ミリリットル)当たり0.45gだったのが、その後の40年間で0.08g減少した。一方、甘さを表す糖度は14.6度から1度上昇。この間、年平均気温は上昇傾向が続いた。
リンゴの生育に及ぼす気温の影響を詳しく解析したところ、温暖化に伴って発芽や開花が早まり生育期間が長くなっていたほか、成熟期の気温も高まっていた。人工気象室などでの研究では生育期間が長いほど果実の酸含量が減り糖分が増える。また、成熟期の気温が高いと酸含量が減ることが確認されており、甘さが増したのも温暖化によるものと推定した。リンゴの収穫日は暦日のほか、満開後の日数や果皮の色、デンプン含量などを指標として決めたが、どの指標で比較してもおおむね酸含量は低下し、甘味が増すという同じ傾向が見られた。
農作物の食味に対する温暖化の影響を明らかにするには、同一品種の作物を長期にわたって同一の条件で栽培し続ける必要がある。このため世界的にもデータが極めて限られており、これまで確認するのが困難だった。

グラフは酸含量と糖度の変化(11月1日時点、長野、「ふじ」)、図は温暖化と果実の食味変化の関係(提供:果樹研究所)