視覚障害者の歩行訓練システムを開発
―反射音などで周囲の様子を立体的に再現
:産業技術総合研究所/東北大学

視覚障碍者のための聴覚空間認知訓練システム(提供:産業技術総合研究所)

 (独)産業技術総合研究所と東北大学は4月11日、視覚障害者が音を手掛かりに周辺の状況を認識できるようにする歩行訓練システムを共同で開発したと発表した。市販のゲームコントローラーやパソコンがあれば利用可能で、これまで必要だった高価で大型の専用装置を小型・低コスト化することに成功した。すでに訓練システムのソフトウエアの無償配布を開始しており、視覚障害者の社会参加促進に役立つと期待される。

 

■小型・低コスト化で使いやすく

 

 産総研ヒューマンライフテクノロジー研究部門の関喜一主任研究員と東北大学電気通信研究所が共同で開発、東北学院大学、東北福祉大学、国立障害者リハビリテーションセンターなどの協力を得て実用化した。
 開発した訓練システムは、専用ソフト「WR-AOTS」と市販のパソコン、ヘッドホン、ゲームコントローラーで構成、視覚障害者が身に着けることができる。
 このシステムを使うと、周囲に車の流れや建物など障害物があるときの音の移動や反射など立体的な音響空間をヘッドホンで人工的に再現できる。視覚障害者が身に着けて利用できるため、学校のグラウンドなど広くて障害物のない安全な場所で歩行訓練をすることができる。
 視覚障害者はこれまで、実際の生活環境の中で周囲の音から障害物を感知する歩行訓練を受けていたが、障害物に恐怖心を抱いたり実際に危険を伴ったりする場合があるため、新しい訓練システムの開発が期待されていた。
 これまでも同様の訓練システムを開発する試みはあったが、大型の専用装置が必要で持ち運びができず、価格も約500万円と高価だった。これに対し新システムは、東北大が開発した立体的な音響空間を再現する技術を活用、視覚障害者の頭の位置・方向を計測するのにはゲームコントローラーに内蔵のジャイロセンサーや加速度センサーなど用い、また、通常のパソコンを利用できるなど小型化・低コスト化を実現した。

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