(独)農業環境技術研究所は3月30日、果樹や野菜の重要害虫であるフジコナカイガラムシの性フェロモンの化学構造を解明したと発表した。この害虫は、幼虫の一時期を除くと殺虫剤が効きにくく防除が難しいが、この化学物質を誘引源とした性フェロモン・トラップを用いると、フジコナカイガラムシの発生状況をより正確に予測でき、殺虫剤による効果的な防除が期待できるという。今回の成果をもとに、香料メーカーの富士フレーバー(株)が、誘引剤を商品化、市販を始めた。
性フェロモンは、メスの成虫がオスの成虫を呼び寄せて交尾するために放出する匂い物質。特定の種のオスだけを強力に引き寄せるので、誘引剤として使ってオスを捕獲すれば対象害虫の発生状況を簡単に把握できる。
そこで農業環境研は、福岡県農業総合試験場、島根県農業技術センターと共同で発生予測の確立に向けた研究に取り組み、今回、メスの成虫が出す匂い物質を約180万匹分集めて濃縮、オスの成虫を引き寄せる成分だけを分離して、化学構造が「2-イソプロピリデン-5-メチル-4-へキセニルブチレート」であることを突き止めた。この物質はわずか0.001mgで1日当たり数十匹のオスを誘引・捕獲できるという。
コナカイガラムシ類は、樹皮の隙間などに生息し、成熟すると厚いワックスに覆われるため殺虫剤が効きにくい難防除害虫。対策としては、殺虫剤に対して感受性が高い若齢幼虫期を狙って殺虫剤を散布することが効果的とされているが、いつごろ産卵・孵化するのか詳しいことは分かっていなかった。
これを誘引源とした性フェロモン・トラップでオスの成虫を集めると、オスの発生状況が簡単に調査でき、その後の幼虫の発生する時期や量を高い精度で予測する、いわゆる発生予察が可能になるという。
No.2012-13
2012年3月26日~2012年4月1日