(独)物質・材料研究機構は11月18日、高効率燃料電池として期待されている固体酸化物燃料電池(SOFC)用の新しい電解質材料を2種類開発したと発表した。
この新材料を陽極と陰極の間に挟む電解質に使えばこれまでより低い温度で作動するSOFCが実現でき、「500~650℃の中温度域で作動するSOFCの実用化が視野に入ってきた」と同機構はいっている。
SOFCは、陽極(空気極)で生じた酸素イオンが固体酸化物でできた電解質中を通って陰極(燃料極)側で燃料の水素と反応し電気を起こすという仕組み。燃料電池の中でも最も発電効率が高く、将来性が期待されているものの、従来の固体酸化物電解質は700~1,000℃に加熱する必要があった。
新電解質の一つは、イットリウム添加ジルコン酸バリウム(BZY)にレアアース(希土類元素)のプラセオジム(Pr)を加えたもの。BZYは、これまでも優れた化学安定性を持つことは知られていたが、焼結性が悪くその性能を生かせずにいた。同機構は、10%のプラセオジムを含む「BZPY」にすることで焼結性の改善に成功した。
もう一方は、酸化ニッケル(NiO)とBZYの混合粉末を固めた基板に、プレス成形したインジウム添加ジルコン酸バリウム(BZI)を載せ1,450℃で焼結して作る。1,450℃で焼結するとインジウムが蒸発してイットリウムに置換され、これまで得られなかった高密度のBZY電解質膜がNiO-BZY基板上に出来上がる。
SOFCは、作動温度を700℃以下まで下げると部品に安価なステンレスが使えるようになって、大きな課題であるコストの大幅ダウンが可能になるといわれている。
新開発の電解質材料は、2種類とも汎用プレス機による成形と大気中焼結で量産できることから生産性の面でも有利と同機構は見ている。
No.2010-45
2010年11月15日~2010年11月21日