超電導のメカニズム解明に手がかり
:産業技術総合研究所/広島大学

 (独)産業技術総合研究所は11月15日、広島大学放射光科学研究センターと共同で、ユニークな超電導物質として世界的に注目されている「ルテニウム(Ru)酸化物」の超電導機構の解明に重要な手がかりを得たと発表した。
 超電導は、物質中の電子が何らかの力で2個1組の電子対となることで起きるとされているが、ルテニウム酸化物も古くから知られる金属系超電導物質と同様に格子状に並んだ原子の振動(格子振動)が電子を結び付ける「ノリ」の役割をしていることを明らかにした。
 これまで電子が持つ磁石としての性質がノリになっているとの見方もあったが、今回これに決着をつけた。高温超電導で知られる銅酸化物を含む新しいタイプの超電導現象の解明に役立つと期待される。
 電子は、1個1個が微小な磁石としての性質を持つが、金属系超電導物質や銅酸化物超電導物質では2個の電子が互いに反対方向を向いて磁石としての性質を打ち消しあうスピン一重項という状態で電子対を形成する。これに対し、ルテニウム酸化物は、同じ方向を向くスピン三重項となるため、電子の磁石としての性質が電子対形成に関係しているのではないかと見られていた。ただ、スピン三重項では、電子の運動状態が3つ重なっているなど複雑で、ノリの実体や強さを精密に調べることはこれまで困難だった。
 これに対し、研究グループは、放射光を利用することで異なる運動状態の電子を別々に観測することに成功、ルテニウム酸化物の場合もノリが結晶の格子振動であることを確認した。
 同研究所は、「今回の成果によって超電導になる温度を上げる方法や、新しい超電導物質の探索に重要なヒントが得られる」と期待している。

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