(独)宇宙航空研究開発機構(JAXA)は11月16日、小惑星探査機「はやぶさ」が7年かけて小惑星「イトカワ」から持ち帰った約1,500個の微粒子が「イトカワ」由来のものと確認したと発表した。月以外の天体で試料が採取され、地球に回収されたのは世界で初めて。自らが誕生した頃の記録を残す小惑星「イトカワ」微粒子の今後の本格的分析は、46 億年前とされる太陽系の起源解明の貴重な手掛かりになるものと見られる。 「はやぶさ」は、平成15年5月に打ち上げられ、同17年9月に「イトカワ」周辺に到達、同年11月に「イトカワ」に2回接地して地表での試料採取を試みたが失敗、肉眼で見える大きさの試料は得られなかった。しかし、多くの苦難を乗り越えての今年6月のオーストラリアでの地球帰還カプセル回収後、JAXAが2つの試料収納容器のうちのA室を特殊なヘラで探り、直径0.01mm以下の微粒子約1,500個を発見した。この微粒子は、「はやぶさ」接地の際に「イトカワ」地表から舞い上がり、入り込んだらしい。 これらの微粒子を一粒ずつ、走査型電子顕微鏡で観察、分析した結果、JAXAは全てを「イトカワ」のものと判断した。[1]微粒子に含まれていた鉱物の種類と成分比率などが隕石の特徴と一致、地球上の岩石と合わない、[2]「はやぶさ」搭載のリモートセンシング機器で推定した「イトカワ」表面物質のデータと合致する、[3]回収した試料収納容器からは地球上の一般的な火成岩の破片が見つからなかった、からである。 年明けにも、JAXAなどによる「イトカワ」微粒子の詳細な分析が始まる。火山活動がなく、生まれた当時そのままの状態を保っている「イトカワ」表面微粒子の詳細な分析では高輝度光科学研究センター(兵庫)の大型実験施設「SPring-8」で放射光と呼ぶ特殊な光を使った分析も行う。微粒子を薄切りにして結晶構造も調べる。こうしたことから、微粒子ができた年代などが分かる。 JAXAは、「はやぶさ」探査機の「イトカワ」探査成功に続いて「はやぶさ2」探査機による次の小惑星探査を計画している。目標は「1999JU3」。この小惑星は、「イトカワ」の倍ほどの大きさで、炭素に富むという。地表移動可能な小型探査ロボットを着陸させるほか、人工的にクレーターを作って地下物質を採取、地球に持ち帰る。平成26年度に打ち上げ、同32年度に地球に帰還する。開発・打ち上げ費用は、約264億円という。
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小惑星「イトカワ」から微粒子を持ち帰った小惑星探査機「はやぶさ」(提供:宇宙航空研究開発機構) |
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