高輝度・高耐光性の微小「ガラスカプセル蛍光体」を開発
:産業技術総合研究所

 (独)産業技術総合研究所は6月22日、高性能蛍光体を直径が1万分の1mm以下という微小なガラス球に閉じ込めた「ガラスカプセル蛍光体」を開発したと発表した。同研究所は今後、バイオ研究や臨床検査などの分野で使う蛍光試薬や感染症の迅速診断などへの応用を目指すが、電子材料用蛍光体としての用途も開拓する。
 開発したのは、直径20~100nm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)のガラス球の中にカドミウムや亜鉛などからなる特殊な半導体(CdSe/ZnS)を封じ込めたもの。この半導体は、電子をナノ領域に閉じ込める量子ドットと呼ばれる構造を持ち、外からの光を吸収して波長域の離れた別の光を高効率で発する高輝度蛍光体になるという性質を持つ。
 今回開発したガラスカプセル蛍光体は、量子ドットをガラス球の中に10個以上閉じ込めることに成功した。これまでにも量子ドットをガラス球に閉じ込める試みはあったが、閉じ込められるのは1個にとどまっていた。
 また、ポリマーで量子ドットを被覆した蛍光体はすでに市販されているが、その約10倍の高輝度化を実現した。さらにポリマー方式では、バイオ試薬として使用する過程で蛍光体が溶け出したり、蛍光発光のために照射する紫外線で劣化するなどの問題があったが、今回の方式では耐光性も100倍程度高くすることができたという。

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ガラスカプセル蛍光体の透過電子顕微鏡像(提供:産業技術総合研究所)