(独)物質・材料研究機構は6月23日、地上で最も薄い材料とされている「グラフェン」という炭素でできた超薄膜を使って集積回路(IC)の基本的な素子を試作、優れた性能を確認したと発表した。 グラフェンは、厚さが僅か炭素原子1個分という超極薄のシート(原子膜)。炭素原子の塊である黒鉛(グラファイト)片を基板の表面に押し付けると得ることができ、シリコンに代わるIC材料として注目されている。 電子素子は、微細化が進み、最小加工寸法がいずれシリコンでは対応できない10nm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)以下になるといわれ、その代替の一候補として急浮上しているのがグラフェン。 しかし、グラフェンは、入力した信号電圧に対し出力信号の電圧がどう変わるかを示す電圧ゲインが低過ぎるという問題を抱えている。電圧ゲインが1以上でなければ、信号が減衰して消滅してしまうが、これまでのグラフェン素子研究で報告されている電圧ゲイン値は1より遥かに小さく、0.044程度が最高だった。 同機構は、グラフェン上にアルミニウム薄膜をつけると、両材料の境界に酸化アルミニウムの絶縁膜が自然に形成(自己形成)されることを利用して、一枚のグラフェン上にロジック素子(論理素子)を形成、電圧ゲインを7まで高めることに成功した。この電圧ゲインは、これまでの最大値の約150倍にあたる。 また、グラフェン製ロジック素子は、数十~100Vもの高い入力電圧(ゲート電圧)が必要で、これをどう下げるかという難問も併せて抱えていたが、これもクリアし、試作した高効率ゲートは1V程度の低電圧で動作することを確認している。 詳しくはこちら |  |
グラフェンで作った素子の光学顕微鏡写真(提供:物質・材料研究機構) |
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