難病の「IgA腎症」解明の手がかりを得る
:産業技術総合研究所

 (独)産業技術総合研究所は6月7日、発症メカニズムが不明で治療法も確立されていない難病である腎臓病「IgA腎症」の解明に手がかりを得たと発表した。
 同研究所糖鎖医工学研究センターの成果で、人間の体内にある免疫抗体の一種IgA1の分子構造がある種の糖鎖の結合によって変異することを突き止めた。IgA腎症では、腎臓の一部にIgA1が沈着することが知られているが、その沈着の仕組みや発症との関係などはまだ解明されていない。
 研究チームは、抗体の構造変異がこの沈着に関与している可能性もあるとして、今回の成果をもとに発症メカニズムの糸口をつかみたいとしている。
 抗体は、人間の体内に細菌やウイルスなどの異物が進入してきたときに、それに取り付いて無害化するたんぱく質の一種で、免疫反応の重要な担い手。Y字型をしているIgA1は、Y字上部にある2つのFabドメインと呼ばれる部分と、下部のFcドメインと呼ばれる部分とがちょうつがい(ヒンジ)で結ばれた構造をしている。実験では、このヒンジ部にある種の糖鎖を結合させたところ、IgA1が取り得る2つの立体構造(シス型とトランス型)の内、結合させる前に比べトランス型の割合が大幅に増えることを見出した。
 研究チームは、トランス型が増えたことでY字型の立体構造がT字型に近づいている可能性があるとして、今後糖鎖の種類や長さを変えたときの立体構造の変化を解析すると共に、そうした変化がIgA腎症の発症とどう関係しているかなどの研究に取り組みたいとしている。

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