光利用効率が極めて高い光触媒材料を発見
:物質・材料研究機構

 (独)物質・材料研究機構は6月7日、光の利用効率が極めて高い光触媒材料を発見したと発表した。リン酸銀という物質で、これを水に混合して太陽光を当てると短時間に効率よく水から酸素が発生する。人工光合成などの実現に一歩前進の成果という。
 光触媒の代表的な材料である二酸化チタンは、太陽光の4%程度に過ぎない紫外領域の光にしか反応しない。このため、太陽光の約43%を占める可視光を効果的に利用できる高い可視光活性を持った光触媒材料の開発と、それを用いたシステムの構築が求められている。
 同機構によると、リン酸銀は、吸収された光の反応寄与率を示す量子収率が可視光照射下で90%前後という驚異的な値を示した。植物の光合成の量子収率は、93%前後といわれており、ほぼそれに匹敵する。光酸化性能を調べる青色染料の分解試験では、これまで有望とされてきたバナジウム酸ビスマスなどの光触媒が脱色に2時間近くかかるのに対し、わずか4分で完全に脱色したという。
 リン酸銀は、このように酸化力は極めて高いが、還元力が弱いため、水から水素を得ることはできないが、還元力にも秀でた材料を今後開発すれば、水分解による水素製造や人工光合成による二酸化炭素の資源化などが期待できるという。

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可視光下で極めて高い酸化力を示したリン酸銀(提供:物質・材料研究機構)