「コシヒカリ」のゲノムの塩基配列を解読
:農業生物資源研究所

 (独)農業生物資源研究所は5月24日、イネの品種「コシヒカリ」のゲノム(全遺伝情報)の塩基配列を解読したと発表した。
 コシヒカリは、日本で栽培面積と生産量が最も多いイネの品種だが、その遺伝子がどのように祖先品種から現在の品種に伝わってきたのかは分かっていなかった。
 近年、遺伝子配列を解読する技術は飛躍的に進展しており、同研究所が今回の研究で用いた新型シーケンサー(塩基配列解析装置)は、従来の数千倍の塩基配列解読速度を持っている。このため、これまでの技術では見出すことが極めて困難だった遺伝的に近い日本のイネの品種群内の塩基配列の違い(一塩基多型:SNP)を大量に検出することが可能になった。さらにこの情報をもとに確立したSNPタイピングアレイという遺伝子型判定技術を活用することにより、近代育成品種のゲノムの構成を詳細に明らかにすることが可能になった。
 今回の研究では、近年急速に進展した遺伝子配列解読技術を用いて、コシヒカリのゲノムの全塩基配列を解読した。その配列を2004年に国際共同研究で解読されたイネ品種「日本晴」の塩基配列と比較することにより、日本晴とコシヒカリの塩基配列の間には67,051か所の塩基配列の違い(SNP)が存在することを見出した。
 さらに、イネの品種改良の歴史において重要とされた151品種を選び、それぞれについて、ゲノム全体をカバーする1,907か所のSNPを調査して、コシヒカリのゲノムの起源を明らかにした。
 その結果、コシヒカリは「朝日」、「亀の尾」、「愛国」といった100年以上前の有名な品種を含む6種の在来品種からまとまったゲノム領域を受け継いでいることが分かった。また、コシヒカリに次いで栽培面積と生産量が多く、いずれもコシヒカリを親に持つ「ひとめぼれ」、「あきたこまち」、「ヒノヒカリ」の3つの品種に伝達されたゲノム領域を抽出した結果、「あきたこまち」と「ひとめぼれ」はゲノムの80%を、「ヒノヒカリ」は60%をコシヒカリと共有していることが明らかになった。 
 さらに、これら4品種(合わせて日本のイネの栽培面積と生産量の65%を占める)が共通に保有し、在来品種から受け継がれているゲノム領域が18か所見出された。
 この研究成果は、日本のイネにおける品種改良の歴史を遺伝子レベルで明らかにした初めてのもので、今後の品種改良の重要な情報基盤になるとみられる。

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