(独)産業技術総合研究所は5月28日、広島大学、山口大学、(株)KELK、(株)デンソーと共同で、バリウム・ガリウム・スズから成る新熱電材料を開発、これを用いた「熱電発電モジュール」を試作したと発表した。現在市販されている熱電材料のビスマス・テルル系より50ºC以上高い300ºC以上の高温で発電できるのが特徴で、中温領域の廃熱回収への利用の道を拓いたといえる。特別な材料を使わないので、資源的に不安がないのも大きな利点。 熱エネルギーを電気エネルギーに直接変換する熱電発電は、システム構成がシンプルで小型化し易いことから近年、廃熱回収技術として注目されている。 同研究所は、市販のビスマス・テルル系熱電材料の使用上限温度である250ºCを超す温度でも使える熱電材料や熱電発電モジュールの開発に取り組んできたが、エネルギー・産業技術総合開発機構のプロジェクトとして昨年6月から今回の共同研究に取り組み、バリウム・ガリウム・スズ系熱電材料の高性能化と、この新材料を使った発電モジュールの試作に成功した。 バリウム・ガリウム・スズは、いずれも単体では金属だが、一定の組成比にするとカゴ状の結晶構造を持つ化合物半導体となり、カゴの中の緩やかに束縛されたバリウム原子によって熱伝播が抑制され、ビスマス・テルル系熱電材料を超す高性能が期待できる。 また、基本的組成からの僅かなズレによってp型、n型両方の熱電材料になる特徴があるので熱的・機械的性質が同じになり、両者を組み合わせたモジュール設計がし易く、製造工程を共通化できるなど、他の熱電材料と比べて幾つかの長所を持つ。 今回は、8対のpn素子対に金属電極を付けた外形寸法が28mm×28mm×5.5mmの発電モジュールを試作した。300℃の温度差(高温側330ºC、低温側30ºC)で発電特性を測って最大発電出力1.7W(ワット)、発電効率約4%を得た。 今回、共同開発チームが試作した発電モジュールには、バリウム・ガリウム・スズの多結晶体を用いたが、次は広島大学とデンソーが開発中の小型単結晶を使ってより性能を上げ、300ºC近辺の未利用廃熱で変換効率10%以上の高性能廃熱発電システムの実現を目指す。 詳しくはこちら |  |
試作したバリウム・ガリウム・スズ製8対型熱電発電モジュール(提供:産業技術総合研究所) |
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