(独)農業生物資源研究所は4月22日、プライムテック(株)、(独)農業・食品産業技術総合研究機構畜産草地研究所と共同で飼育してきた世界で2例目、日本で初めて誕生した体細胞クローン豚「ゼナ」(雌、品種:梅山豚(メイシャントン))が、3月18日に9年8カ月の生存期間を記録して寿命を終えたと発表した。 体細胞クローン動物とは、体細胞(生殖細胞以外の細胞)の核を、核を除いた未受精卵に導入し、仮親(かりおや)に移植することにより誕生する動物で、哺乳類の体細胞クローンとしては、1966年に世界で初めて英国で羊の「ドリー」が誕生した。 研究グループは、2000年7月2日に、日本では初めてとなるクローン豚の誕生に成功し、「ゼナ」と名付けその発育や繁殖性、寿命などについて調査してきた。 豚は、臓器の大きさや代謝系などが人間に近いことから人間の遺伝子や疾病に関係する遺伝子を組み込んだクローン豚を作り、新たな医療技術の開発に利用することへの期待が高まっている。 一方、体細胞クローン動物は、生後短期間に死亡する割合が通常の動物より高いこと、さらに世界初の体細胞クローン羊「ドリー」が通常の羊より短命(6年7カ月)だったとの報道が大きくなされたことから、現在までクローン動物の寿命についての議論が続いている。 雌豚である「ゼナ」の発育は順調で、4カ月齢で成熟に達した後、人工授精により14頭の子豚を出産し、正常な繁殖性を示した。「ゼナ」は、2000年3月18日に老衰による衰弱で起立不能となったため、やむを得ず安楽死させた。解剖の結果では、疾患を示す病変はなかった。 豚の正確な寿命は分かっていないが、日本で飼育されてきた中国系の品種・梅山豚の生存期間としては10年以上のものは確認されていない。したがって、「ゼナ」が約10年間、正常に発育・生存したことは、体細胞クローン技術により誕生した動物では生後短期間に死亡する例があるものの、その時期を無事経過した動物は必ずしも短命ではないことを示している。 詳しくはこちら |