(独)農業・食品産業技術総合研究機構花き研究所は4月21日、立ち枯れ症状を引き起こす萎凋(いちょう)細菌病に強い抵抗性を持つカーネーションの新品種「花恋(かれん)ルージュ」を育成したと発表した。 カーネーションの立ち枯れ症状を引き起こす萎凋細菌病は、植物病原細菌によって引き起こされる土壌伝染病害の一つで、日本の暖地におけるカーネーション栽培にとって最も大きな障害となっている。栽培地域では、隔離ベンチ栽培や土壌消毒などの方法により発病の回避を図っているが、一旦発病すると有効な薬剤がないことから、抵抗性の強い品種の開発が望まれていた。 同研究所は、1998年から萎凋細菌病抵抗性検定法の研究を進めていたが、既存のカーネーション品種から遺伝的に強い抵抗性を持つ品種を見出すことができなかった。このためさらに、カーネーションの仲間のダイアンサス属野生種を調べ、強い抵抗性を持つ野生種ダイアンサス・キャピタタス(Dianthus capitatus)を見つけた。 その後、ダイアンサス・キャピタタスとカーネーションとの種間の交雑により、強度の抵抗性を有する「カーネーション中間母本農1号」を育成した。しかし、この品種は、花が小さく、茎も短いなど野生種の性質を強く残していて、実用品種とはほど遠いものだった。 そこでさらに、ダイアンサス・キャピタタスの抵抗性のみを持つ実用的なカーネーション品種を開発するために、カーネーションへの「戻し交雑」と呼ばれる方法などを用いて、15年以上の年月をかけ赤い花の実用品種を育成することに成功した。 また、新品種の育成過程では、病気への抵抗性のある個体を判別できる「DNA(デオキシリボ核酸)マーカー」を利用することにより、育種選抜の効率化を図った。 新しく開発されたカーネーションは、「花恋(かれん)ルージュ」と名付けられた。世界初の萎凋細菌病に抵抗性を持つカーネーションで、花の色は、赤いカーネーションの代表的な品種「フランセスコ」とほぼ同じ濃い橙赤色で、大きさなどの特性もほとんど同じとなっている。 また、6回にわたって行われた抵抗性検定(発病率調査)における新品種の平均発病率は7.1%で、比較対照品種のフランセスコの87%と比べ、極めて強い抵抗性を示している。同研究所では、2月17日に品種出願登録を行った。 詳しくはこちら |  |
カーネーションの新品種「花恋ルージュ」の花(提供:農業・食品産業技術総合研究機構) |
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