(独)理化学研究所は3月10日、文部科学省の「ゲノムネットワークプロジェクト(GNP)」で東京大学とともに収集・整備した「ヒト完全長cDNA(相補的デオキシリボ核酸)クローン」の一般への提供を3月15日から開始すると発表した。
GNPは、遺伝子の発現調節機能やタンパク質などの生体分子間に働く相互作用を系統的に解析し、生命現象を成立させているネットワークを明らかにすることで、生活習慣病や難病などの新たな治療法の開発や創薬につながる新しい知識などを得ようというプロジェクト。
2008年度でプロジェクトは終了したが、理研や東大が中心となって、ヒト完全長cDNAクローンを収集・整備し、数々の研究成果を生み出した。こうして得られた成果の活用を求める要望が強く、cDNAクローンリソースを利用できる体制の構築が望まれていた。
完全長cDNAとは、狭義には、タンパク質に翻訳(合成変換)される領域のみの全長を持つcDNAを指す。cDNAクローンは、元となるcDNAから作られた配列が、全く同じようにコピーされたcDNAのこと。
こうした要望を受けて、理研では東大と協力して、3月15日からつくば市(茨城)にある理研バイオリソースセンター(理研BRC)を通じて、GNPで整備したヒトの完全長cDNAクローン8万個の提供を開始することになったもの。
提供するcDNAクローンリソースは、[1]国内外から収集したヒトの完全長cDNA(ヒトの全遺伝子の6割に相当する約1万4000遺伝子分)と、[2]ヒト完全長cDNAを基に再構築したタンパク質発現ベクターの作製に便利な「Gateway®エントリークローン」(6,300遺伝子分)の2種類。
cDNAクローンの利用希望者は、国立遺伝学研究所が運用するゲノムネットワークプラットフォーム(http://genomenetwork.nig.ac.jp/)で興味のある遺伝子を検索し、理研BRCに請求することでクローンを入手することができる。
cDNAクローン利用のために必要な手続きの詳細は、理研BRC遺伝子材料開発室のホームページ(http://www.brc.riken.jp/lab/dna/ja/)に掲載されている。
No.2010-10
2010年3月8日~2010年3月14日