巨大ブラックホールのスピンを測定することに成功
:宇宙航空研究開発機構

 (独)宇宙航空研究開発機構(JAXA)は3月8日、銀河系の中心にある大きさが約0.1天文単位(1天文単位は、地球と太陽の距離)もの「いて座A*(エー・スターと読む)」という巨大ブラックホールのスピン(自転運動)を新たに考案した方法で測定することに成功したと発表した。 
 その値を自転速度に換算すると、光速(秒速30万km)の22%で、質量が太陽の400万倍と推定されている巨大ブラックホールとしては予想値よりかなり小さかった。
 ブラックホールの性質は、質量、スピン、電荷の3つの物理量だけで完全に決まり、質量はブラックホール周辺の星やガスの運動から測定される。スピンは、ブラックホールの近くから放射される光の性質を用いて何例か算出されているが不確定要素が多く、ブラックホール誕生の謎解きには別の方法による測定が求められていた。
 今回、JAXA宇宙科学研究本部の研究グループは、ガスがブラックホールへ落下する時に生じる現象からブラックホールのスピンを求める新たな方法を考案、銀河系の中心にある巨大ブラックホール「いて座A*」のスピンを求めることに世界で初めて成功した。
 こうして算出したスピンの値は、大きさが0.1天文単位もある巨大ブラックホールの値にしては多くの研究者の予想値より小さく、太陽の30倍程度以上の重さの星が超新星爆発した後にできたブラックホ-ルで測られた値と大差がない。
 その理由の一つとして研究グループは、巨大ブラックホールの自転エネルギーが、さまざまな天体からガスが光速に近い速度で噴出する宇宙ジェットと呼ばれる現象などのエネルギーに転換された可能性があるとしている。

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