次世代光源用電子銃で世界最高の500kVの電圧を達成
:高エネルギー加速器研究機構/日本原子力研究開発機構/広島大学/名古屋大学

 高エネルギー加速器研究機構は3月10日、(独)日本原子力研究開発機構、広島大学、名古屋大学と共同で、高輝度大電流電子ビームを発生する「光陰極直流電子銃」を開発、世界最高の500kVの電圧を達成したと発表した。
 高エネルギー電子加速器を用いた光源として、これまで蓄積リング型X線光源や自由電子レーザーが開発され、使われてきた。これらの光源利用の高度化(測定の精密化、迅速化など)を一層進めるには、光源性能のさらなる向上(輝度、強度の増大)が不可欠といわれる。そのため、日本の共同研究グループのほか、米国、英国、ドイツ、中国などでも既存の光源を超える次世代放射光源の研究開発が進められている。
 共同研究グループは、「エネルギー回収型リニアック(ERL)」と呼ばれる新型の電子加速器に注目し、これを用いた次世代放射光源の開発を行っている。
 ERLとは、高周波を使って電子を加速する超電導加速器を用いて加速し、高エネルギーとなった電子ビームを光の発生に利用した後、同一の加速器を減速器として動作させ、電子のエネルギーを高周波エネルギーとして回収、大電流で高品質の電子ビームを連続的に加速する装置をいう。
 ERLの光源実現のためには、高輝度で大電流の電子ビームを発生させる500kV以上の電圧を持つ「光陰極直流電子銃(フォトカソードDC電子銃)」の開発が必須とされているが、これまで実現していなかった。
 フォトカソードDC電子銃は、レーザーを半導体に照射して光電子を発生させる方式だが、開発上の最大の問題は放出される電子(電界放出電子)によりセラミックス管の内壁が破損する現象が生じることであった。
 共同研究グループは、放出電子がセラミックス管の壁に衝突することを防ぐためのガードリングを採用し、その形状を最適化した。その結果、500kVの安定な電圧を達成することに成功した。

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