モデル植物「ミヤコグサ」の効率的な遺伝子機能解析法を開発:農業生物資源研究所/かずさDNA研究所/作物研究所/オーフス大学

 (独)農業生物資源研究所は3月5日、(財)かずさDNA研究所、(独)農業・食品産業技術総合研究機構の作物研究所、デンマーク・オーフス大学と共同で、マメ科のモデル植物である「ミヤコグサ」で、効率的に遺伝子を破壊し、その遺伝子の機能を解析する技術を開発したと発表した。
 マメ科植物では、根に着生する根粒菌との共生により、大気中の窒素を養分として利用できることが以前から知られており、これを共生的窒素固定と呼んでいる。
 研究グループはこれまで、生物のゲノム(全遺伝情報)解読でマメ科のモデル植物となっているミヤコグサから共生的窒素固定ができない変異体を数多く見つけ、解析してきた。それらの変異体の中には、共生に必要な遺伝子にレトロトランスポゾン(転移性の遺伝要素)が転移によって挿入され、遺伝子が破壊されていることが分かり、このレトロトランスポゾンを、「LORE 1」と名付けた。
 植物のゲノムの中にあるレトロトランスポゾンは、そのコピー(分身)を作り、ゲノムの別の場所に割り込むことができる。これを転移と呼んでおり、転移先が遺伝子の場合はその遺伝子が分断されて機能が損なわれてしまう。
 LORE 1は、ミヤコグサのゲノムにもともと存在していたが、通常は眠っていて動かない状態で、活性がないために遺伝子破壊を起こすことはなかった。
 今回の研究で、ミヤコグサが持つレトロトランスポゾンLORE 1の転移の制御機構の解明に取り組んだ。その結果、組織培養によりLORE 1を人為的に眠りから目覚めさせ、活性化して転移させることに成功した。さらに、その転移のパターンを詳しく解析した結果、主に花粉で転移することを突き止めた。
 従来の遺伝子破壊の方法では、遺伝子組換え体植物を多数育成するには広大な閉鎖系温室が必要であった。しかし、今回の成果により、ミヤコグサではLORE 1を転移させることにより、効率的な遺伝子破壊とその機能の解析が可能となった。
 今後、この方法を活用することでミヤコグサから窒素固定などの農業上有用な遺伝子の特定や、さらに同じマメ科の作物であり農業にとって重要な作物であるダイズからの有用遺伝子を特定し、それを活用した品種改良の加速化が期待される。

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