「都市鉱石」からコバルトと金を回収することに成功
:物質・材料研究機構

 (独)物質・材料研究機構は3月2日、「都市鉱石」と呼ばれる廃棄物からレアメタルの一つであるコバルトを回収し、さらに残りの液から金が回収できることを確認したと発表した。
 携帯電話など電子機器の部品には、レアメタル(希少金属)が随所に使われ、それらの有用金属を含む廃棄物は「都市鉱山」や「都市鉱石」と呼ばれ、新しい資源として注目されている。
 使用済み電子機器などからのレアメタル類は、全体として大量であるものの、個々の装置に使われているのは微量で、各所に混在して分散しているという特徴を持っている。このため、従来の天然鉱石からのレアメタル精錬技術を利用するとコストが著しく高くなることなど色々な問題があり、「都市鉱石」からのレアメタルの抽出に適合する新しい技術の開発が求められている。
 同研究所では、高感度の水質センサー用材料として開発した「HOM」と呼ばれるメソポーラスシリカが、ほんのわずかの量の物質でも検出できる優れた分子認識能力を持っていることから、さらに精度を上げて、「都市鉱石」のコバルト検出に利用する研究を進めてきた。
 メソポーラスシリカとは、直径2~50nm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)の細孔を持つ二酸化ケイ素をいう。
 同機構は、HOMの細孔表面に錯体などを高密度に付けた修飾HOMを完成させた。この修飾HOMは、希薄な溶液の中で目的とする特定の元素を認識し、捕獲できる性能を持っており、「都市鉱石」を酸で溶かした希薄で様々な元素が混在している溶液からコバルトの回収に成功した。実験では、1gの修飾HOMで3.3mgのコバルトを回収した。
 研究グループは、残りの液にも微量の貴金属などが含まれているため、さらに金を抽出することを検証した。その結果、金の場合は、他の金属と比べて還元されやすいため、独自の技術を開発する必要はなく、現在実用になっている溶解・析出反応で回収できることを確認した。
 今後は、さらにナノ構造制御や処理効率を高めるなどの技術開発を進める予定。

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