1インチ角大の大型単結晶ダイヤモンドウエハーの試作に成功:産業技術総合研究所

 (独)産業技術総合研究所は3月1日、単結晶ダイヤモンドウエハーの作製技術を開発、1インチ(約2.5cm)角大の試作品作りに成功したと発表した。このウエハー(基板)は、同一の種結晶から作った複数枚の薄板状の単結晶ダイヤモンドを接合して作った。同研究所は、2インチ角大のウエハーを目標に開発を進め、1インチサイズについては1年以内の実用化を目指す。
 ダイヤモンドは、硬度が高く、熱伝導度が大きく、光の透過波長帯が広く、誘電率が小さく、化学的に安定している、などの優れた特性を持つことから、光学部品や半導体素子、バイオセンサーなどの各種デバイスへの応用が考えられ、特にエレクトロニクス部門への応用ではシリコン系や炭化ケイ素系を凌ぐパワーデバイス実現が期待されている。だが、それには、大きさがインチサイズの単結晶ダイヤモンドウエハー製造技術確立が不可欠とされている。
 同研究所は、マイクロ波でメタンや水素などの原料ガスをプラズマ状態(イオンと電子に電離した状態)にして、基板上にダイヤモンドを堆積させるマイクロ波プラズマCVD(化学蒸着)法による大型ダイヤモンド単結晶製造技術開発を2003年から進めており、2007年に1cm角大のウエハー状結晶作成に成功している。
 今回は、その手法を用いて同一の種結晶から直接、性質の揃った単結晶ダイヤモンドウエハーを複数枚(今回は6枚)作製し、それらを接合してインチサイズのウエハーを実現した。同じ種結晶から成長させたため6枚の薄板状単結晶ダイヤモンドは、いずれも性質や結晶方位が揃っており、異常な結晶成長や、うまく接合しないといった問題をほとんど起さずに接合できた。
 ダイヤモンド単結晶は、天然には数mm以上の大型品がほとんどなく、超高圧による人工合成でも大型化は不可能とされてきた。また、気相合成法による人工合成は、長時間にわたって成長を持続させるのが難しく、大型単結晶ダイヤモンドウエハーの大量生産を可能にする技術はまだ実現していない。

詳しくはこちら

1インチ角大の大型単結晶ダイヤモンドウエハー(提供:産業技術総合研究所)