金属製の光走査素子を初めて開発、製造コスト10分の1に
:産業技術総合研究所

 (独)産業技術総合研究所は2月9日、金属バネ材を用いたメタルベースの高速光走査素子(光スキャナー)を世界で初めて開発し、高性能化と低コスト化を実現したと発表した。
 携帯型プロジェクター、レーザーディスプレーなどレーザー光源を利用したプロジェクション(投射型)ディスプレーでは、色再現性の高さ(広色域)だけでなく消費電力の低減化などが求められているが、開発した光走査素子は独自に考案した「ラム波共鳴圧電駆動方式」と呼ばれる駆動方式を採用し、投写型ディスプレーへの利用に必要な、25 kHz(キロヘルツ)以上の高速走査速度と、20V以下の低駆動電圧で、100度以上の大きな光学的走査角度(ミラー振れ角)を達成した。
 また、メタルベース構造にすることで、製造コストをこれまでの10分の1に削減、3万時間以上の連続耐久試験もクリアしている。
 従来、共振型の光走査素子は、使用するシリコンウエハーが単結晶材料で、微細加工技術を利用すると共振状態で利用しても高い耐久性が期待でき、また量産時の共振周波数のばらつきなども低く抑えられると考えられていた。ところが、実際のデバイスでは、シリコン自体が脆い材料であるため、車載やモバイル製品に応用する場合、衝撃により突発的な破損を起こすことが多く、信頼性に欠けるという課題があった。
 それに対し今回の素子は、自動車部品用に利用される安価で高強度・高弾性の金属バネ材料を用い、シリコン材より2桁ほど安い。また、クリーンルームなどの高価な製造インフラも不要で、強い価格競争力が期待できる。
 さらに共鳴圧電駆動をより高効率化・最適化することで、光走査素子として十分に利用可能な直径1mm角以上のミラーサイズで、駆動電圧20V、28 kHzの高速走査速度と、104度という従来の素子に比べ5~10倍以上の大きな走査角度とを同時に実現することに世界で初めて成功した。

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