(独)森林総合研究所は1月19日、根を含む樹木全体の呼吸量を推定する手法を世界で初めて開発したと発表した。この研究は、筑波大学、琉球大学、ロシア科学アカデミーのスカチョフ森林研究所、ダルトン(株)、沖縄県林業試験所、京都大学、ムラワルマン大学(インドネシア)などと共同で行われたもので、森林の炭素貯留量の正確な推定を行うことが可能になった。 森林の炭素貯留量を正確に推定することは、森林が地球温暖化抑制に果たす役割を明確にする上で重要とされる。これまで樹木の個体の大きさと個体の呼吸の関係式を基に、数多くの森林生態系の炭素収支研究がなされてきた。 森林の炭素収支は、樹木の光合成(収入)と呼吸(支出)の差し引きで定義され、温度で決まる呼吸がその収支に大きな影響を及ぼしている。しかし、森林は、大小の樹木個体によって構成されており、樹種や生活環境の多様性などから、根を含む樹木個体の正確な呼吸の測定は極めて難しく、個体呼吸を推定する一般式は定まっていなかった。 今回の研究で、樹木個体重量と個体呼吸の関係を、実測によって一般法則化し、それを基に森林全体の呼吸量を推定する独自の方法を開発した。 この研究では、発芽直後の芽生えから幹の周囲2m以上の大木まで対応できる20種類以上の測定装置を開発し、熱帯の東カリマンタン(インドネシア)から亜寒帯のシベリア(ロシア)にわたる64種類271本の「根を含む全個体の呼吸」を直接実測した。従来の樹木個体呼吸の研究の中では、最も多いサンプルの個体数で、これまでにない広範囲におよぶ個体重量と樹木個体の呼吸の関係を正確に測定した。 シベリアの永久凍土地帯のカラマツの個体呼吸の測定では、樹木内部の温度は永久凍土とたき火の熱を利用して制御した。また、巨木は切断し、切断の影響がないことを確認しながら測定した。 今回の研究で開発した新しい手法は、長年一般法則化が困難であった樹木個体呼吸の一般定式化を可能にした。この方式はまた、芽生えたばかりの若木から大木まで、多種類にわたり適応できる呼吸推定方式として、予測が難しかった根や土壌を含めた森林生態系全体の炭素蓄積の変動研究に大きく貢献すると期待されている。 この研究成果は、米国科学アカデミー紀要の1月8日付けオンライン版に掲載された。 詳しくはこちら |  |
| シベリアの永久凍土地帯でのカラマツの呼吸測定の様子(提供:森林総合研究所) |
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