植物が不必要な遺伝子を眠らせる仕組みを発見
:農業生物資源研究所/理化学研究所/大阪大学

 (独)農業生物資源研究所は1月21日、(独)理化学研究所、大阪大学と協力して、植物が不必要な遺伝子を眠らせておく「遺伝子サイレンシング」の新しい仕組みを発見したと発表した。
 遺伝子組換え作物の開発では、目的の機能を持つ遺伝子を他の生物から取り出し、作物のゲノム(全遺伝情報)に導入する必要がある。しかし、導入された有用遺伝子は、しばしば植物によって異物(非自己遺伝子)として認識され、その機能発現を妨げられる場合が少なくない。このような現象は、「遺伝子サイレンシング」と呼ばれている。遺伝子サイレンシングは、生物が持つ防禦機能の一つで、近年の生物学では最先端研究分野の一つになっているが、まだ不明な部分が多い。
 今回の研究では、外来性導入遺伝子の発現抑制(サイレンシング)をつかさどる分子(MOM1)に注目した。MOM1の名前は、ギリシャ神話に登場する眠りの神様「モルフェウス」に由来する。
 遺伝子サイレンシングには、複数の仕組みが存在すると考えられている。その一つの「RNA(リボ核酸)依存的DNA(デオキシリボ核酸)メチル化経路」(RdDM経路)では、外来性導入遺伝子やトランスポゾンなどの非自己遺伝子が、さまざまな因子の作用により眠らされる。トランスポゾンは、自己複製をしながらゲノムの中を動く寄生分子の一つだが、その多くは転移の機能を失い残骸としてゲノムの中に存在する。
 今回の解析では、MOM1の機能を破壊した植物で、遺伝子サイレンシングによる眠りから覚めた遺伝子をくまなく拾い上げた。その結果、眠りから覚めた遺伝子の多くは、普段はRdDM経路で眠らされているトランスポゾンの残骸であることが分かり、MOM1がRdDM経路のどこかで働いている可能性が示された。このため、研究グループは、眠っていたトランスポゾンの残骸が目覚める際の変化を追跡することで、遺伝子サイレンシングにおけるMOM1の役割の解明を試みた。
 今回の研究によって、これまで知られていなかった複雑な遺伝子サイレンシングの仕組みの一端が明らかになり、「植物は非自己遺伝子をどのようにして眠らせるのか?」という疑問の解明に向けて大きな一歩が得られた。この成果は、遺伝子組換え作物の効率的な研究開発につながるものと期待されている。
 この研究成果は、2009年12月10日発行の欧州分子生物学機構の雑誌のオンライン版に掲載された。

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