(独)国立科学博物館は10月18日、京都大学との共同の遺伝子解析により、ユキノシタ科の植物「チャルメルソウ」属の日本固有種に最も近い種が北アメリカの西岸地域に現在も生育していることを見つけたと発表した。
チャルメルソウという名前は、その果実の姿が、ラーメン屋台でおなじみの木管楽器「チャルメラ」を連想させるために付いたもので、江戸時代の文献にもその名が見られる。
日本列島の急峻な地形が作る沢筋の環境は、多くの日本固有の植物を育み特徴的な植物相を形成する。ユキノシタ科チャルメルソウ属の植物は、きれいな谷川のそばの湿った場所に生えており、日本に11種2変種(未記載種を含めると13種3変種)が分布している。
その内の1種を除く全ての種が、日本固有の種という際立った存在となっている。そのほとんどは、チャルメルソウ節と呼ばれる独特のグループに属するが、国外に似た種がほとんど見られないこともあって、その由来は明らかになっていなかった。
国立科学博物館では、遺伝子解析を積極的に取り入れた最先端の生物多様性の研究を進めている。その一環として、世界中のチャルメルソウの仲間について、新たに考案した解析法も用いて詳細に遺伝子の解析を行った。
その結果、チャルメルソウ節は、北米西岸に分布する近縁種「ミテラ・ペンタンドラ」の祖先の種と「テリマ・グランディフロラ」の祖先の種のそれぞれのゲノムが融合して生じ、そこから劇的な種の多様化が起きたものである可能性が高いことが判明した。この発見は、日本固有の植物と北米大陸の植物相の関係が、これまで考えられていた以上に深いことを示すことになった。
この研究成果は、9月22日付けの「Molecular Biology and Evolution」(国際分子進化学会学術雑誌)に掲載された。
また、この研究に関連する植物は、11月20日(日)まで筑波実験植物園で開催している「日本の固有植物展」で展示している。
No.2011-42
2011年10月17日~2011年10月23日