遺伝子組み換え実験で文科省から厳重注意受ける
:作物研究所

 (独)農業・食品産業技術総合研究機構は10月20日、同機構の作物研究所が法律で定められた拡散防止措置をとらずに遺伝子組み換え実験を行ったとして文部科学省から厳重注意を受けたと発表した。遺伝子組み換えに利用した大腸菌は、哺乳動物への病原性はなく、また菌の外部への拡散の可能性は極めて低いと見られているが、こうした事態の再発防止に向け、同機構と同研究所は遺伝子組み換え実験の管理・監視の強化などを決めた。
 この実験は、大豆の遺伝子を大腸菌に組み込んで増やすというもので、2007年1月から今年5月にかけて行われた。遺伝子組み換え実験は、その危険性に応じて拡散防止措置が4段階に分けられているが、この実験はもっとも簡易な措置でよい「P1」レベル。
 作物研究所が今年8月に行った内部調査によると、[1]実験中は閉じておくべき扉を閉じずに実験した、[2]実験室の外に設置された培養器で組み換え大腸菌を培養した、[3]実験室に実験中の表示が掲げられていなかった、などの不適切な措置が認められた。
 ただ、実験期間中、組み換え大腸菌を含む培地や容器は、高圧滅菌器で処理するなど、廃棄物の不活化措置は適切に行われていたという。また、使用した大腸菌は、特殊な培養条件以外では生存できない菌株であり、大腸菌の培養には密閉した容器を使用、実験関係者以外は実験室に立ち入ることはなかったことなどから、遺伝子組み換え大腸菌の外部への拡散の可能性は極めて低いとしている。
 事態発生の原因については、職員に対する法令遵守や安全管理の周知が徹底していなかったことと、職員の研究実施状況の把握が不十分であったことを挙げ、教育訓練の徹底、遺伝子組み換え実験の点検体制の整備、監視体制の強化などを再発防止策として掲げた。

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