(独)農業・食品産業技術総合研究機構の東北農業研究センターと全国農業協同組合連合会(JA全農)は10月7日、密植に適し、年3~4回栽培・収穫を繰り返して果実を多収穫できるトマトの新品種「すずこま」を開発したと発表した。国内でも徐々に消費が増えているクッキングトマトの安定供給を目指し開発した。「低段密植・養液栽培」と呼ばれる栽培方式用の初の品種で、管理が簡単なことから植物工場での生産にも向いているという。近く果実の試験販売を開始し、来秋から種子の市販を予定している。 日本でのトマト消費は、これまでほとんど生食で、ほぼすべてが多段栽培と呼ばれる方法で作られている。茎が無限に伸びる「非心止まり性」品種を用い、主枝を支柱に固定する誘引作業を行いながら縦に伸ばしていき、数ヶ月間収穫を続ける方式。「支柱栽培」あるいは「長期どり栽培」と呼ばれ、次々に発生する側枝(腋芽)を全て取り除く芽かき作業を伴う。 それに対して低段密植・養液栽培は、苗を通常の2~4倍の密度で定植して高設ベンチで養液栽培(水耕栽培)し、一定間隔で分化した1~3段の花房の果実のみを収穫する。その後新たな苗に植え替え、これを年に3~4回繰り返す。トマトの栽培技術として1970年代頃から日本で開発されてきたが、これまでは多段栽培用の大玉トマト品種を用いていたことから果実数や芽かき労力などの問題があり、専用品種の育成が求められていた。 10年位前に「にたきこま」というクッキングトマト品種を育成した東北農業研究センターと、低段密植・養液栽培の実用化試験に取り組んでいたJA全農は、2007年から共同研究を開始し、低段密植・養液栽培に適した特性を持つ優良系統の選抜を進め、「すずこま」の育成に成功した。 「すずこま」は、[1]花数が多く、30~40gの小さめの果実を多数実らせる、[2]茎の伸長が停止する心止まり性で、手間のかかる芽かき作業が要らない、[3]ハサミを使わず省力的なヘタ無し収穫が簡単にできる、などの特徴がある。果実は、抗酸化作用を持つ色素リコペンを多く含み、濃赤色。糖度は、低めで加熱調理に向いている。 来秋からの種子の市販と並行してJA全農が低段密植・養液栽培と組み合わせた普及に取り組む予定という。
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果実を鈴なりにつけた「すずこま」(提供:農業・食品産業技術総合研究機構) |
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