大規模なオゾンホールが北極上空でも発生
:国立環境研究所

 (独)国立環境研究所は10月3日、これまで南極でしか観測されたことがなかったような大規模なオゾンホールが今年の冬から春にかけ北極上空で発生していたと発表した。日本や米国など8か国による観測で明らかになったもので、北極で観測されたオゾンホールとしては史上最大規模。今後も発生の可能性は否定できないという。
 南極と違って多くの人が住む北極圏でオゾン層が破壊されれば、太陽からの有害な紫外線を防ぐ働きが弱くなり、皮膚がんや白内障など健康に与える影響が大きくなることも心配されている。
 米国の人工衛星や、日本など各国が打ち上げた気球の計測機による観測データなどを分析した。その結果、今回は特に3月末にオゾン層が大きく破壊され、その破壊の割合は北極の高度約19km上空の大気塊にあったオゾンの約80%にまで及んだことが分かった。これまで、北極でもオゾンホールは観測されているが、2000年に起きた約60%の破壊が最大だった。今回は、それを大きく上回り、2003年に南極で起きたオゾン層破壊に匹敵する状況だったという。
 大規模なオゾン破壊は、北極上空の成層圏でマイナス80℃以下という異常低温が従来にない長期間、約4カ月も続いたことが一因とみられる。オゾン層の破壊は、かつてエアコンの冷媒などに使われていたフロンなどが太陽の紫外線で分解され、活性度の高い塩素系物質ができるために起きる。ただ、それにはマイナス80℃以下という低温が一定時間続くことが条件になるが、南極に比べ大気温度の高い北極ではこれまでそうしたことはあまりなかった。
 今回の異常低温について、環境研は「最近の温室効果ガスの増加による影響」と見ている。

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