大震災で中断していた高性能磁性体コアの製造を再開
:J-PARCセンター

 J-PARCセンター(大強度陽子加速器施設:茨城・東海村)は8月3日、東日本大震災で中断に追い込まれていた加速器用高性能磁性体コアの製造を再開し、約2週間の量産試験で問題なく1日1枚製造できることを確認したと発表した。
 J-PARCセンターは、高エネルギー加速器研究機構と(独)日本原子力研究開発機構が共同で運営する大強度陽子加速器施設。今後、この磁性体コアを用いた高性能な高周波加速空洞を製作し、加速器の大強度化・性能向上を目指す。
  J-PARCのシンクロトロンは、3秒に1回ビームを加速して約150kWのビ-ムをユーザーに提供してきたが、一度に加速する粒子数の増加と加速周期の短縮で、サービスビームを750kWにする性能向上を目指している。
 今回製造した高性能磁性体コアは、粒子を加速する高周波加速空洞に使う金属磁性体製のドーナツ状をした大型のリングで、直径80cm、厚さ2.5cm、重さは60kg。リングの厚さは、今のシンクロトロンに使っているリングの7割しかないが性能は約2倍で、従来の半分の電力で必要な電圧が得られる。
 磁性体コアに使った金属磁性体は、原料を熱処理してnm(ナノメートル、1nmは10億分の1m)サイズの結晶を析出させているが、結晶の高周波損失を低くするため、熱処理中に強い磁場を掛ける。大震災では、この磁場中熱処理炉があるJ-PARCセンターの施設が大きな被害を受けたが、これで製造再開のメドがついたことになる。
 J-PARCの大強度化、高性能化のためには、100枚を超す高性能磁性体コアがいる。

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高性能磁性体コアの写真(提供:J-PARCセンター)