原発事故の放射能汚染水、粘土鉱物で処理
:物質材料研究機構/愛媛大学/防衛大学校/東邦大学

 (独)物質・材料研究機構、愛媛大学、防衛大学校、東邦大学は8月4日、東京電力(株)の福島第一原子力発電所事故による放射能汚染水の処理に粘土鉱物が有効であることを共同で確認したと発表した。粘土鉱物を詰めたカラム(筒状容器)に汚染水を通して処理、セシウムなどの回収に成功した。使用済み粘土鉱物から放射性物質を回収するのは今後の課題だが、大量に入手可能な粘土鉱物を利用できるうえ危険な副生成物も生じないため、放射能に汚染された大量の海水を処理するのに適しているという。
 粘土鉱物は、ケイ素やアルミニウムの酸化物の薄い層が何層も重なった構造で、層の間に陽イオンが存在している。適当な条件下でこの陽イオンが他の陽イオンと入れ替わる性質を利用、汚染水からセシウム、ストロンチウム、ヨウ素の除去を試みた。実験では放射能のない同位体を使った。
 バーミキュライトと呼ばれる粘土鉱物を用いた実験では、粘土表面の微小な穴がセシウムイオンの大きさとよく合うため、セシウムを完全に除去できた。
 一方、ストロンチウムイオンは、ナトリウムイオンと大きさがあまり変わらずそのままでは除去できないが、別の陽イオン樹脂カラムに通す前処理をすることで除去できた。
 ヨウ素の場合は、合成サポナイトとポリビニルアルコール、シリカゲルからなる複合粘土を硝酸銀溶液で処理したカラムを利用して除去できた。
 研究グループは、今回の成果をもとに10tの汚染水を17時間で処理できるプラントも提案している。
 放射能汚染水の処理には、ゼオライトを主体とした吸着処理がすでに用いられている。ただ、海水から放射性物質を除去するのは一般に難しいとされているため、研究グループは選択肢をできるだけ増やす必要があるとして研究に取り組んだ。
 この研究成果は、8月5日発行の日本化学会の速報誌「Chemistry Letters」に掲載された。