高温超伝導体と似た磁気状態を持つ新物質を合成
:高エネルギー加速器研究機構/物質・材料研究機構/青山学院大学

 高エネルギー加速器研究機構は8月2日、(独)物質・材料研究機構、青山学院大学の研究者と共同で、超高圧下で合成した新物質のイリジウム酸化物「Ba2IrO4」が高温超伝導体の銅酸化物に似た磁気状態を持つことを突き止めたと発表した。新たな高温超伝導体となる可能性が期待できるとしている。
 新物質は、6万気圧の高圧をかけて合成したもので、代表的な銅酸化物の高温超伝導体La2CuO4と同じ結晶構造をしており、電子のスピンと軌道の相互作用による新しい絶縁体状態を形成していると考えられるという。そこで研究チームは、茨城県東海村にある大強度陽子加速器施設(J-PARC)のミュオン科学実験施設において、「ミュオン・スピン回転法(μSR)」と呼ばれる研究手法を用い、新物質の磁気状態を詳しく観測した。
 その結果、Ba2IrO4は、マイナス33℃(絶対温度240K)以下でスピンの向きが互い違いに秩序よく並ぶ反強磁性相が出現することを発見した。さらに、詳細な解析により個々のイリジウム原子が持つ磁気モーメントは、理論値よりもかなり小さいことが明らかになったという。
 これらは、高温超伝導体の母物質の銅酸化物でよく観察されている現象であることから、研究チームは「新物質も高温超伝導につながる可能性があることを示唆している」としている。

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