(独)農業・食品産業技術総合研究機構の作物研究所は6月27日、東日本大震災に伴う東京電力福島第一原子力発電所の事故により、放射性物質に汚染された農地の土壌の除染技術開発に関する実証試験の一つとして、計画的避難区域に指定されている福島県川俣町山木屋地区の水田や畑で、土壌浄化作物として有望と考えられるケナフ、キノア、アマランサスの現地栽培試験を行うと発表した。
今回の試験では、川俣町山木屋地区で、それぞれ約1アール(100m2)の水田と畑の区画にケナフ、キノア、アマランサスの3種類の作物の播種を行い、その後の生育状況を調べると共に、植物に吸収された放射性セシウムの量を測定する。
栽培試験を行う作物のケナフやキノア、アマランサスは、近年、新しい用途の開発を目指して海外から導入された。このうち繊維作物であるケナフは、生長が非常に早く、だいたい100日から125日で成熟し、高さ1.5~3.5m、茎の直径1~2cmになる。生長が速く、収穫できる繊維も多いため、木材パルプの代替資源として注目を集めている。
雑穀であるキノアやアマランサスも、栄養価が非常に高く、健康食品として注目されている。
これら3種類の作物については、これまで土壌中の放射性物質セシウムや重金属の吸収能力が高いことなどが報告されている。また、生育速度が速く、生育量の大きいことから、土壌浄化機能の高いことが期待されるが、福島県地域での生育特性や栽培適性などについては検討されていなかった。
同研究所では、10月上旬を目途に刈り取り、セシウムの吸収量などを測定して、来春までに土壌浄化作用の検証結果を報告書にまとめ、計画的避難地域での農業復興への貢献を目指した土壌浄化対策に役立てたいとしている。
なお、計画的避難区域とは、居住し続けた場合に1年間の放射性物質の積算線量が20ミリシーベルトに達する恐れのある地域。その地域では、自治体(市町村)や県、国の密接な連携のもとで、住民の計画的な避難が行われる。
No.2011-26
2011年6月27日~2011年7月3日