筑波大学は2月14日、受精卵から個体になる発生過程で口と肛門が別々に形成されることから分類学で新口動物(しんこうどうぶつ)と呼ばれる生物に新しい仲間が見つかったと発表した。
同大学下田臨海実験センター(静岡・下田市)の中野裕明助教らの成果で、珍渦虫(ちんうずむし)と無腸類が互いに近縁であることを確認した。分類学上これまで脊椎動物門、棘皮動物門、半索動物門に分けられていた人間を含む新口動物に第4の門が加わったことになるとして、中野助教は新口動物の進化の解明につながると期待している。
今回の成果は、英国ロンドン大学のテルフォード教授と共同で研究したもので、2月10日付の英国の科学誌「ネイチャー」のオンライン版に掲載された。
無腸類と珍渦虫は、いずれも脳などの集中神経系などを持たない非常に単純な構造を持つ海産無脊椎動物。この内、珍渦虫は無腸類と同様に当初はプラナリアなどの扁形動物門に含まれているとされていたが、他の動物との近縁関係は謎とされていた。最近は、新口動物の一員であるという説や無腸類と近縁であるとする説が唱えられるなど、系統学的位置について最終的な結論は出ていなかった。
これに対し、今回は珍渦虫と無腸類の遺伝子配列を3種類の方法で調べた結果、いずれの方法でも[1]無腸類は新口動物の一員、[2]珍渦虫も新口動物、[3]両者は互いに近縁のグループを形成している―ことが確認できたという。
この結果、両者は同じ新口動物の第4の門を形成しているとして、中野助教らはこの門を「Xenacoelomorpha」と名付けた。
No.2011-7
2011年2月14日~2011年2月20日