天然ガスを含む新鉱物を発見
:物質・材料研究機構/産業技術総合研究所/千葉県立中央博物館など

 (独)物質・材料研究機構、(独)産業技術総合研究所、千葉県立中央博物館などは2月15日、千葉県南房総市で採取された鉱物がメタンなどの天然ガスを含む未知の鉱物であることを突き止め、「千葉石(ちばせき)」と命名したと発表した。主成分にメタンを含む鉱物の発見は世界で2例目という。国際鉱物学連合に新鉱物の名称を申請し承認を得た。
 物材研などの分析によると、千葉石はシリカ(酸化ケイ素)鉱物の一種で、ケイ素原子と酸素原子が「かご」状の結晶構造を形成しており、「かご」の内部にメタンなどの天然ガス分子を閉じ込めている。日本近海の海底に存在し天然ガスの宝庫と期待されるメタンハイドレートは、水分子でできた「かご」状の骨格にメタンガスが閉じ込められている。それに対し千葉石は、メタンハイドレートの水分子(水素と酸素)をケイ素と酸素に置き換えた構造になっている。
 メタンハイドレートは、メタンを閉じ込めているが、ほかにエタンやプロパンなどのガス分子を含むものもあり、総称して天然ガスハイドレートと呼ばれる。大きなガス分子は、大きな「かご」にしか入ることができず、含まれるガス分子の種類によって天然ガスハイドレートの結晶構造は異なり、自然界にはⅠ型、Ⅱ型、H型の3種類の存在が確認されている。
 シリカ鉱物では、メラノフロジャイトという鉱物がⅠ型の骨格構造を持つことが知られているが、Ⅱ型、H型のシリカ鉱物は見つかっていなかった。今回の分析で、千葉石はⅡ型の構造のシリカ鉱物であることが判明した。併せてH型の構造を持つシリカ鉱物も発見した(鉱物名は、申請準備中)。これにより、天然ガスハイドレートと同様、シリカ鉱物でも3種類の構造が自然界に存在することを世界で初めて確認した。
 千葉石が発見された地層は、海洋プレートが大陸プレートの下に沈み込む際に海洋プレート上の堆積物が剥ぎ取られて大陸プレートのふちに付く付加体と呼ばれる地質構造の一部と考えられている。こうした場所では、有機物が熱分解されてガスが発生する。千葉石は、そのガスを結晶構造中に捕獲したと考えられるという。今回の発見は、天然ガスハイドレートの起源や地球規模での炭素循環の解明などに役立つとしている。

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「千葉石」の結晶の拡大写真(提供:物質・材料研究機構/産業技術総合研究所)