(独)農業・食品産業技術総合研究機構は11月5日、日本全薬工業(株)と共同で、血圧下降作用などの機能が注目されている「GABA(ガンマ・アミノ酪酸)」の生成能を安定して発揮する乳酸発酵スタータ―を開発したと発表した。
また、このスターター(チーズ製造の際に乳酸発酵をスタートさせるもの)を利用することにより、安定して多量のGABAを含むチーズの製造が可能であることを明らかにした。
GABAは、生体に含まれるアミノ酸の一種。GABAを多く含む食品は、血圧降下作用など人体に有益な生理作用を期待できることが分かっている。一般的なチーズは、GABAをほとんど含んでいないが、チーズやヨーグルトを作る時に種菌(乳酸発酵スターター)として接種する乳酸菌の中には、高いGABA生成能力を持つものがある。
今回研究グループは、血圧降下作用などが期待されるGABAを多量に含むチーズを製造することを目的として、安定したGABA生成能を発揮するチーズスターターの開発を行った。
新しく開発されたミックススターターは、チーズの風味をよくする株、乳酸生成力が強い株、GABA生成力が強い株の3種の乳酸菌の混合体。このミックススターターは、混合直後から調整時、1回目の継代、2回目の継代と代を繰り返しても構成菌株である3株の比率を維持できるため、いつも同じ能力を発揮できる。これを乳酸発酵スターターに用いてチーズを作ると、GABA含量が高く、風味が良い、チーズを安定して製造することが可能になる。
今後の予定としては、ヤギ乳を原料とし、新しいチーズスターターを使用して製造したチーズを、日本全薬工業が販売する。
研究グループでは、さらに研究開発を進め、現在のチーズスターターの主流で、取り扱いが簡単な乾燥粉末状態で提供できるようにしたいと考えている。
No.2009-44
2009年11月2日~2009年11月8日