(独)農業生物資源研究所は11月4日、(社)農林水産先端技術産業振興センターの農林水産先端技術研究所と共同で参加している「国際ブタゲノムシーケンシングソ-シアム(SGSC)」が、ブタの全ゲノム(遺伝情報)の塩基配列(塩基の並び方)の概要解読を完了したと発表した。
家畜動物では、これまでに牛やニワトリについては全ゲノムの概要塩基配列が公表されているが、これらと並ぶ食肉生産用家畜であるブタのゲノム塩基配列の全貌は明らかになっていなかった。このため、ブタゲノム塩基配列解読を目指して、2003年にSGSCが結成された。SGSCには、現在、日本、米国、イギリス、中国、韓国など12カ国・地域が参加している。
SGSCでは、米国原産のデュロック種のブタ(雌)を用いて全ゲノム塩基配列の解読を行うこととし、まず全ゲノムの物理地図(ゲノム全体の地図)を作成、次いで2006年から実際のゲノム解読を行ってきた。
ブタのゲノムは、常染色体18対と、XとYの性染色体で構成され、全体で約27億塩基対からなる。今回の概要解読で日本の農業生物資源研究所と農林水産先端技術研究所は、シーケンシング(ブタゲノム塩基配列解読)データの解析などを担当する英国のサンガー研究所と共同契約を結び、ブタの第6、第7染色体上のゲノムの解読を行った。サンガ―研究所では、日本の分も含めて塩基配列の解読の結果を解析し、全ゲノムの概要塩基配列を公開した( http://www.ensembl.org./Sus_scrofa/Info/Index)。
今回の概要解読で、ブタの全ゲノムの約98%が明らかにされた。
また、これに関連して農業生物資源研究所を中心とした研究グループは、ブタの体内の諸器官で実際に発現している遺伝子の全長解読を進めており、これまでに1万個以上の遺伝子の塩基配列を公開している。今後この情報を基に、今回概要解読されたゲノム配列のアノテーション(遺伝子の位置などの情報付加)の効率化・加速化が可能になる。
これらのブタゲノムの解析の成果によって、美味しく安心できるブタ肉生産の加速化や、医療用実験モデルとしてのブタの開発促進に貢献することが期待されている。
No.2009-44
2009年11月2日~2009年11月8日