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次世代有機LED材料の電子の動きを初めて直接観察―波長可変フェムト秒パルス光を用いて観察に成功:筑波大学ほか

(2021年6月25日発表)

 筑波大学、高エネルギー加速器研究機構(KEK)、(国)産業技術総合研究所、九州大学の共同研究グループは6月25日、次世代有機LED材料として期待されている「熱活性型遅延蛍光(TADF)」と呼ばれる分子材料の、励起(れいき)された電子の動きを直接観察することに成功したと発表した。TADFデバイスの今後の開発促進が期待されるという。

 有機LEDは発光層が有機化合物からなる発光ダイオードで、有機EL(エレクトロルミネッセンス)とも呼ばれている。外部からの電気刺激によって励起状態となった分子の中の電子が、元の基底状態に戻ろうとする際に発光する。

 この励起状態にはいくつかの種類があり、励起三重項状態と呼ばれる励起状態は最も多く生成するにもかかわらず、光を発しにくい性質があり、この状態をどのように発光させるかが大きな課題となっている。

 TADFは、次世代の有機LEDの中心を担うと期待され、盛んに研究されている材料で、その発光を支配する励起状態の電子のダイナミクスの直接観察が望まれていた。

 研究グループは今回、波長可変フェムト秒パルス光を光源とする高エネ研の時間分解光電子顕微鏡という光電子顕微鏡を用いることにより、薄膜におけるTADF発光過程の電子ダイナミクスを直接観測することに成功した。

 観察の結果、励起電子の生成から、発光による失活、また、濃度消光と呼ばれる特異な無輻射失活(むふくしゃしっかつ)過程までの電子の動きを捉えることに成功した。

 さらに、励起電子により生成された励起子が自発的に解離することで長寿命の電子が生成され、この電子がTADFの発光効率を低下させていることも突き止めた。

 今回の研究はTADF発光過程の本質を理解するための基礎的な知見となるもので、今後よく制御された薄膜中での励起電子のダイナミクスを系統的に研究することで、高性能のTADFデバイスの開発が加速されると期待されるという。