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祖父母世代が経験しないような暑い日・大雨を解明へ―孫世代が一生で経験する回数を推計:国立環境研究所ほか

(2021年6月11日発表)

 (国)国立環境研究所、京都大学、立命館大学の共同研究グループは6月11日、気候変動予測データを解析し、祖父母世代が経験しないような暑い日および大雨をその孫世代が一生で経験する回数について推計し、排出シナリオ別・地域別にその比較を行ったと発表した。

 幼い子供が将来どのような気候を経験するかは親や祖父母の世代がCO2などの温室効果ガスの排出量をどれだけ削減できるかにかかっている。

 そこで研究グループは「2040年まで生きる祖父母のもとに、2020年に孫が生まれ、その孫が2100年まで生きる」というケースを考え、気候変動予測データを用いて祖父母が一生の間(1960〜2040年)で一度も遭遇していないような暑い日と大雨を孫が80歳になる2100年までにそれぞれ何日経験するかを調べた。

 脱炭素社会の実現に向け国連のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)は現在第6次報告書作りに取り組んでおり、2100年までの世界の平均気温上昇量が4.8℃と最も高い気候モデルから最も低い2.0℃というモデルまで4種類のシナリオが検討されてきた。今回の研究はその内の世界の平均気温上昇量が4.8℃と最も高い「SPP5-8.5」と呼ばれているシナリオと、その値が最も低い「SPP1-2.6」の両方を使って解析を行った。

 その結果、温室効果ガスの排出削減が最も進まない、つまり世界の平均気温上昇量が4.8℃と最も高いシナリオだとアフリカ北部や南米の熱帯域などの地域では祖父母世代が生涯に経験したことのないような暑い日を孫世代が一生涯に1,000回以上にわたって経験しうることになり、大雨については南米大陸の北西部や中央アフリカ、東南アジアなどで5回以上経験する可能性があるという推計結果が得られた。

 それに対し、もう一方の世界の平均気温上昇が2℃と低い方のシナリオだと解析結果は大きく変わり、孫世代が直面する暑い日や大雨の増加はかなり抑えられ、日本での発生についてはそれぞれ20回程度と2回程度になると見ている。

 研究グループは「祖父母世代に将来の気候変動をより我が事として感じてもらうシンプルな指標として提案した」と強調している。

 この研究成果は、2021年6月1日付けで学術誌「Environmental Research Communications」に掲載された。