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特定たんぱく質の探索用タグ―動物用が植物にも有効:筑波大学ほか

(2020年9月11日発表)

 筑波大学と東北大学の研究グループは9月11日、動物細胞に含まれるたんぱく質の特定アミノ酸配列を検出するための試薬「RAPタグ」が植物細胞でも使えることを確認したと発表した。RAPタグのアミノ酸配列にだけ結合する抗体を、植物細胞を使って低コストで大量に作る見通しも得た。抗体を利用して特定たんぱく質を精製する基盤技術になるとみている。

 たんぱく質は動物や植物の体を構成し生命活動に欠かせない物質。特定のたんぱく質の働きを調べるには、生体内にある多種類のたんぱく質の中から目的のたんぱく質を探し出す必要がある。

 そこで筑波大の三浦謙治教授と東北大の加藤幸成教授らの研究グループは、ラットの特定たんぱく質を構成する12個のアミノ酸からなる物質で、動物細胞内にある目的のたんぱく質に目印を付けられるRAPタグに注目。動物細胞だけでなく植物細胞への応用の可能性を調べた。

 その結果、植物の体内でRAPタグを付けたたんぱく質を作らせた場合、RAPタグが持つアミノ酸配列を見分けて特異的に結合する抗体「PMab-2」を利用することで目的のたんぱく質を検出・精製できることが分かった。さらに、RAPタグだけを識別して結合する抗体「PMab-2」を植物細胞で大量に作らせ、簡単に高純度精製できることも明らかになった。従来、抗体「PMab-2」を作るには、取り扱いに手間のかかるチャイニーズハムスターの卵巣細胞を使っていた。

 今回の成果について、研究グループは「植物細胞を用いる方が低コストで、抗体の精製も容易」として、診断用の抗体や安価に作成する必要がある抗体などの作製にも応用できるとみている。