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地磁気逆転で2万年間も地磁気が不安定化―千葉・市原市の地層「チバニアン」の分析で判明:国立極地研究所/産業技術総合研究所ほか

(2020年9月2日発表)

 国立極地研究所と(国)産業技術総合研究所、茨城大学の共同研究グループは9月2日、約77万年前に起こった直近の地磁気逆転では前後の約2万年間地磁気が不安定であったことが分析により判明したと発表した。「チバニアン」と呼ばれる千葉県市原市にある地層から分かったもので、地球の長い歴史で何度も繰り返し起きている地磁気逆転のメカニズム解明に繫がるのではと期待される。

 地磁気とは地球が持っている磁性のことで磁石は南北をさす。ところが地球は46億年という長い歴史の中で繰り返し何度もその南北が逆転する地磁気逆転を起こしている。最後に発生したのは約77万年前で、日本人の学者の名前が付いている「松山―ブルン地磁気逆転」で、その当時の痕跡が最も明瞭に残っている市原市の養老川沿いの地層の国際的な名称が「チバニアン」。ラテン語で「千葉時代」という意味。

 堆積岩や溶岩からなる地層はそれらが形成された当時の地磁気の情報(古地磁気)を記録している。そのことから地層に記録されている古地磁気を調べることで地磁気逆転の過程を知ることができ、これまでも松山―ブルン地磁気逆転前後の地層の古地磁気の方位や強度の報告はされている。

 しかし、チバニアンの一部の地層ではまだ古地磁気分析が行なわれておらず、松山―ブルン地磁気逆転の‟全体像”が明らかになっていない。

 そこで研究グループは、チバニアンの残されていた古地磁気分析を行って松山―ブルン地磁気逆転の連続的かつ詳細な古地磁気記録作製に取り組み、79万年前から75万年前までの4万年間にわたる連続的な古地磁気方位と古地磁気強度の全体像を明らかにした。

 その結果、松山―ブルン地磁気逆転が起こった前後の少なくとも2万年間地磁気が不安定な状態になっていたことが分かったという。

 地磁気は、地球内部の核の対流によるダイナモ作用と呼ばれる現象によって生じるとされ、国内外でスーパーコンピューターを使ったシミュレーションが行なわれている。今回の成果はそのダイナモシミュレーションの基礎データになると研究グループは話している。