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日本の太平洋側に接近する台風が増加―強度が増し、動きが遅くなり、災害の多発が心配される:気象研究所

(2020年8月25日発表)

 気象庁気象研究所は8月25日、過去40年間の台風の特徴の変化を調べた結果、東京など日本の太平洋側への接近数が増加していることが分かったと発表した。過去の変化を知ることで、今後の台風被害に対する防災、減災対策に役立てたいとしている。

 台風の中心が、気象庁の全国の観測所、施設から300Km以内に入った場合を、「接近」と定義している。台風は年間平均26個発生しており、そのうち約11個が日本に接近していた。

 研究グループは、静止気象衛星「ひまわり」の運用開始以降、気象庁データベースの品質の信頼性が定着した過去40年分の気象観測データを解析。40年間を前半20年(1980-1999年)と後半20年(2000-2019年)に分けて比較した。

 その結果、東京に接近した後半20年の台風の数は前半20年の約1.5倍だった。中でも中心気圧が980hPa(ヘクトパスカル)以下の「強い台風」は、前半の2.5倍にも増加していた。

 「強い台風」が東京に接近した時の気象環境は、後半20年には①海面水温が高い、②風の鉛直シア(上層と下層の風の差)が小さい、③大気中層の相対湿度(水蒸気量)が高い、④偏西風が日本上空で弱まっていて、台風の発達に都合の良い条件が揃っていた。

 台風の移動速度も遅くなり(36%減)、その影響を受ける時間が長びいていた。静岡、名古屋、和歌山、高知など東京以外の太平洋側の都市でも似たような変化が確認できた。

 また、7月から10月までの平均の太平洋高気圧(5,880m上空)は、日本の南海で西および北へ広がっており、太平洋高気圧の張り出しが強まっていた。

 これまでの台風の動きは、主に日本の南海上で太平洋高気圧の縁に沿って移動していた。後半20年は太平洋高気圧が北、西へと張り出したため、台風は東京など太平洋側の陸地に近いところを通過するようになり、接近数が増加したと分析している。

 台風の移動速度が低下しゆっくりと進むのは、地球温暖化の影響と共に「太平洋十年規模振動」と呼ばれる気候の内部変動が関連している可能性があると見られている。

 太平洋十年規模振動は、海水温や気圧の平均的状態が10年を単位とした2単位(約20年)周期で変動する現象をいう。数年規模で変動するエルニーニョやラニーニャ、地球温暖化に伴う100年規模の変動との中間にあたる変動として注目されている。