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ホヤ変態の引き金に―ヒトと同じ神経伝達物質:筑波大学

(2020年3月31日発表)

 筑波大学は3月31日、広島大学などと共同で海産動物「ホヤ」が成長過程で体の形を大きく変える変態の引き金となる物質を突き止めたと発表した。オタマジャクシ型の幼生期に神経伝達物質として知られるγ-アミノ酪酸(GABA)がスイッチとなり、パイナップル型の成体への変態を促すことを発見した。ホヤは脊椎動物に最も近い無脊椎動物で、同じGABAを持つヒトが大人になる仕組みの理解などにも役立つという。

 筑波大の笹倉靖徳教授の研究グループが、広島大学や岡山大学、沖縄科学技術大学院大学などと共同で明らかにした。

 変態は成長の過程で体の形を大きく変化させる現象で、昆虫やカエルではよく知られている。海の珍味とされる無脊椎動物のホヤも変態する動物の一つ。幼生期にはオタマジャクシ型をして海の中を遊泳するが、海底の岩などにくっつくと変態を始めて花瓶やパイナップルの形に例えられる成体になる。そこで研究グループは、この変態を促す物質がホヤの体内にあるとみて探索を開始した。

 その結果、ホヤの体内で作られる神経伝達物質GABAがその引き金になっていることを突き止めた。さらに、遺伝子操作でGABAを体内で作れないホヤを作成したところ、変態を起こさず幼生のままとどまることが分かった。また、このGABAはホルモンの一種である性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)を放出させ、それが幼生期のオタマジャクシ型のしっぽの消失を促していることなどが分かった。

 GnRHはヒトも体内に持っており、それがうまく機能しないと第二次性徴が遅れることなどが知られている。そのため、研究グループは「ホヤの変態の仕組みをもとに、ヒトが大人になる仕組みと似ていることとの関係性などについて解明していきたい」と話している。